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2021.10.06
樹脂充てん防爆構造の仕組みや特徴・注意点
私たちの身の回りには、水素や都市ガス、石油や灯油など様々な物質が存在します。
これらの物質は、一定の条件下で燃焼する恐れがある「可燃性物質」であり、特に、危険物を取り扱う化学工場や事務所では接する機会が多いでしょう。
誤った使用や事故により、火災や爆発などが発生するのを防ぐためには、電気機器の防爆構造が欠かせません。
そこで本記事では、防爆構造の中でも注目度が高い「樹脂充てん防爆構造」について解説します。
工場を経営されている方や、危険物を取り扱う仕事に従事している方などは、ぜひ参考にしてください。
樹脂充てん防爆構造とは
防爆構造は、その設計や適用箇所の危険度により複数種類に分類されます。
ここでは、防爆構造の一つである「樹脂充てん防爆構造」について、その特徴やメリットを見ていきましょう。
構造
樹脂充てん防爆構造とは、火花やアークを発したり、高温となり熱を発したりすることで点火源となる恐れを有する部分を樹脂の中に囲い込み、可燃性ガス・蒸気と接触しないようにする電気機器の構造です。
つまり、着火源となりうる電気部品や電気回路を、絶縁性の樹脂(コンパウンド)に埋め込むことで、可燃性物質を遮断し、燃焼や爆発を防ぎます。
分類
樹脂充てん防爆構造は、国際規格IE60079-18で規定され、従来より存在する防爆構造です。
しかし、日本では長い間、新種の防爆構造を表す「特殊防爆構造(s)」として許容するのみでした。
そのような中、2008年に電気機械器具防爆構造規格が改定され「樹脂充てん防爆構造(m)」という単独のカテゴリーが誕生したのです。
また、樹脂充てん防爆構造は、特別危険箇所と第一類危険箇所での使用が可能とされています。
メリット
樹脂充てん防爆構造のメリットの一つは、小型化が可能な点です。
容器内部に侵入した爆発性ガスによる内部爆発に対し、容器が損傷・圧力に耐え、同時に外部の爆発性ガスに引火するのを防ぐ防爆構造を「耐圧防爆構造」と言います。
耐圧防爆構造では、爆発圧力に耐えるだけの丈夫さと、火炎が逃げないための頑丈な接合面が求められるため、筐体が強固で大きい上に重く、コストが高くなりがちです。
また、重厚な筐体に囲まれると、質量を電気信号に変換するセンサ(ロードセル)の変形に制限を受け、測定精度に限界があります。
一方で、樹脂充てん防爆構造では、点火源を絶縁樹脂で亀裂なく囲い込むだけで防爆可能です。
樹脂自体が筐体を兼ねることもでき、強固な容器が必要なく、小型化・軽量化が実現されます。
また、ロードセルの変形に制限を受けることもなく、柔軟性の高いウレタン樹脂を使用することで高精度化も叶うでしょう。
さらに、樹脂充てん防爆構造は他の防爆構造と組み合わせやすいことも、利点の一つです。
注意点
樹脂充てん防爆構造では、充てん用の樹脂を用います。
樹脂には複数の種類があり、それぞれ材質グレードや強度、添加物の有無などが異なります。
樹脂充てん防爆構造を用いる際には、使用環境への適合性を配慮した樹脂選びが重要です。
また、樹脂自体が筐体を兼ねる場合は、静電気の考慮も欠かせません。
樹脂充てん防爆構造を用いて、安全に電気機器を使おう
いかがでしたでしょうか。
今回は、樹脂充てん防爆構造の具体的な仕組みやメリット・注意点を紹介しました。
樹脂充てん防爆構造は、小型・軽量かつ高性能で、メリットが大きいことがお分かりいただけたかと思います。
安全な工場経営には、火災や爆発事故のリスクを最小限に抑えるための対策が必要です。
用途や場所に適した防爆構造を検討しましょう。
防爆工事でお悩みの方は防爆工事.comへご相談ください。