オフィスの空調や建物のエレベーターなど身近なところから、工場や倉庫、ダムなどの大規模施設まで、電気を使う場所には必ず「制御盤」が備わっています。
電気機器をコントロールする司令塔である制御盤は、安心・安全な使用が欠かせません。
しかし、化学工場やプラントなど危険物を取り扱う場所では、火災や爆発などの事故の原因となるリスクもあります。
そこで注目したいのが、防爆構造を持つ制御盤です。
本記事では、制御盤の知識や防爆のポイントを捉え、防爆制御盤について解説します。
制御盤や防爆構造の中身を知りたい方や、プラントや倉庫を管理する方は、ぜひ参考にしてください。
防爆制御盤とは
防爆制御盤とは、その名の通り、防爆構造を備えた制御盤を指します。
ここでは、制御盤が持つ役割や構造を確認した上で、防爆の必要性や防爆制御盤の具体的な種類を見ていきましょう。
制御盤とは
制御盤とは、機械や設備を電気制御するための、電気機器や部品を入れた箱のことです。
制御盤の中には、電気のブレーカーやスイッチ、インバーターやシーケンサー、タッチパネルなどが搭載されています。
これらは、機械のそれぞれの動力部(モーター)に電気を送り動かすための「動力回路」と動力回路(インバーターなど)を指示通り動かすための「制御回路」に分けられます。
制御盤は電気機器の心臓部とも言える重要な役割を果たすため、日々のメンテナンスや点検が欠かせません。
防爆すべき理由
制御盤は、大規模な機械を動かすファクトリーオートメーションの場でよく活用されます。
これらの現場では、石油やガスなどの可燃性物質も扱われる機会が多く、注意が必要です。
可燃性物質は、大気中の一定濃度を満たすとき、着火源があれば燃焼し始め、火災・爆発に繋がりかねません。
電気でコントロールする制御盤は、正常時または異常時にアークや火花を発生させたり、温度が上昇したりすることで、可燃性物質に着火する恐れがあります。
このため、可燃性物質が多く浮遊し爆発・火災のリスクが高い危険場所においては、制御盤の防爆設計が必要です。
内圧防爆構造の制御盤
一般的に、防爆構造には耐圧防爆構造・安全増防爆構造・本質安全防爆構造・内圧防爆構造などの種類があります。
ここでは、制御盤の防爆化によく用いられる内圧防爆構造を例に、どのような仕組みで防爆するのかを見ていきましょう。
仕組み
内圧防爆構造では、運転開始前に制御盤が入った容器内の空気を排出し、保護気体(清浄な空気や窒素などの不燃性ガス)を加圧して注入します。
容器内の保護気体の圧力は、外部の圧力より高く保つことで、容器外部の可燃性ガス・蒸気の侵入を防ぎ、着火源から隔離するという仕組みです。
もし運転中に内圧が一定値以下になったとしても、圧力検出器がこれを知らせる警報を出すか、保護装置が運転を停止させます。
内圧防爆構造と同じように、容器内に清浄な空気を加圧して注入し、腐食性ガスの侵入を防ぐ「エアパージ方式」があります。
ただし防爆目的では、日本国内の検定に合格した防爆機器のみ使用可能です。
エアパージ方式には保護装置がなく、内圧低下時に可燃性ガス・蒸気が侵入してしまうリスクがあるため、危険場所では使えません。
内圧防爆構造では、防爆性能に加え、腐食性ガスの侵入も防げるため防食効果も期待できるでしょう。
電気機器をまとめる司令塔・防爆制御盤
いかがでしたでしょうか。
今回は、制御盤の構造から防爆の必要性、内圧防爆構造について解説しました。
危険場所では制御盤の防爆対策もしっかり行い、事故を防いで安全な運転を行いましょう。